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【TIS株式会社】TISのプロセスマイニング活用戦略

~成長戦略を支えるITとしてのプロセスマイニング活用の実践と展望~

お客様のあらゆる経営課題に向き合い、「成長戦略を支えるためのIT」実現の一環として、お客様の業務改善や継続的なプロセス最適化を目指した、プロセスマイニング活用サービスを提供しているTIS株式会社。今回は、同社の戸田様に、提供しているサービスの詳細や導入の経緯についてお話を伺いました。

 

-戸田様の所属されているビジネスイノベーション事業部およびファンクション&プロセスコンサルティング部のミッションや活動内容をご紹介いただけますでしょうか?

まず、TISでは「ITで社会の願いを叶える」というミッションを掲げ、業務を行っています。システムの企画立案のコンサルティングから、開発や導入、保守、運用までをビジネスの中心に据え、企業や社会の課題解決に取り組んでいます。

ビジネスイノベーション事業部は、約400名の体制でお客様の経営課題の形成、新規事業のコンセプト立案、デジタルトランスフォーメーションの実行支援をビジネス領域として活動しています。

その中で、私が所属しているファンクション&プロセスコンサルティング部では、今年から本格的にプロセスマイニング活用サービスの提供を開始しました。

プロセスマイニングは継続的な業務プロセス最適化を実現する手法であり、この手法を活用することで、データに基づく業務プロセス可視化を行い、業務の改善や最適化を図ることが可能になります。
*サービス紹介Webページ TIS Business Innovation

 

-TIS様では、いつ頃からどのような経緯でプロセスマイニングに注目されていたのでしょうか?

我々はSIer(システムインタグレーター)[1]として、大規模なシステム導入をご支援することが多く、これまで多くの実績を積み重ねてきました。しかし、それだけにとどまらず、業務や事業そのものの変革をご支援したいと考えています。そのためには、業務の効率化等のシステムの導入効果について客観的に可視化したうえで、お客様と同じ目線で課題の解消に取り組む必要があります。一方、それらの可視化が定性的・属人的になっていると、本質的な変革につなげることができずシステムを導入して終わり、となる場面も中にはあり、我々としての課題だと感じております。

そのような背景から、プロセスマイニングはTISの強みであるシステム導入と、推進したい事業変革を結びつけるための重要な技術だと捉えており、2019年頃からプロセスマイニングへの関心が高まり始めました。しかし、当時は日本市場においてまだ普及が進んでいない状況であり、導入事例も少なく、実際の活用には課題が多いと感じていました。その後、日本国内でもプロセスマイニング市場が拡大していることが確認され、昨年から具体的な検討を開始しました。

検討にあたり、昨年4月に、社内でパイロットプロジェクトを立ち上げ、ツール選定、分析手法の模索、効果検証を行いました。このプロジェクトでは、実際の業務データを用いてプロセスマイニングの有効性を検証し、期待通りの成果が得られました。その中で、業務プロセスをデータで正確に把握する重要性と、それを前提とした意思決定の効果の高さを改めて実感しました。

この成果を踏まえ、プロセスマイニングツールを活用した新規コンサルティングサービスを提供するに至りました。
*ニュースリリース:プロセスマイニングサービス提供開始
TIS、データドリブン型業務プロセスの最適化を支援する「プロセスマイニング活用サービス」を提供開始 | ニュースリリース | 2024年度 | ニュース | TIS株式会社

 

-近年プロセスマイニングの普及を感じたとおっしゃっていましたが、どういった点からそのような雰囲気を感じていますか?

プロセスマイニングツールの提供ベンダーが発信している国内導入事例が増加していることに加えて、提供ベンダーが主催するイベントに参加する中で、そこで発信された情報や事例の内容からも、日本市場においてプロセスマイニングが徐々に普及し始めていることを実感しました。

 

プロセスマイニング活用サービスの立ち上げ時について、準備期間、取扱ツールの選定、メンバー育成に関してお話しいただけますか?

パイロットプロジェクトでの成果を見極めた後、昨年6月ごろから本格的にサービス開発チームを立ち上げ、必要なメンバーを集めると共に、サービスの提供価値やサービス提供に求められるスキル、具体的なサービスメニューの検討を開始しました。

取扱うツールに関しては、特定のツールに決め打ちすることなく、複数のツールを多面的に比較検討しました。その結果、原則お客様のニーズに応じたツールを柔軟に選択する方針としつつ、社内パイロットでも採用したcelonis社との戦略的パートナーシップ契約を昨年11月に締結したことを受けて、まずは同社のツールを軸にサービス提供することにしました。

メンバー育成に関しては、パイロットプロジェクトの中でTISのコンサルタント部門とcelonis社のコンサルタントが協力しながらプロジェクトを進め、その過程でメンバーのスキルを向上させました。さらに、プロジェクトに直接参加していなかったメンバーについては、celonis社が提供するe-learningを受講し、認定資格を取得することで、プロセスマイニングの知識とスキルを体系的に習得しました。

 

TIS様のプロセスマイニング活用サービスの特長をお教えいただけますか?

2025年1月に提供開始した「プロセスマイニングQuickWinサービス」の特徴としては、少ない投資かつ短期間でプロセスマイニングの効果を実感できる点です。celonisをお客様環境にインストールする必要はなく、分析対象データをTISに提供頂くだけで、業務プロセスの分析から課題の抽出、解決策検討と効果試算までを2-3ヶ月程度の短期間で実施します。

それに加えて、BPR支援など豊富な実績に支えられた業務変革コンサルティングのノウハウや、SCMなど特定領域の専門性を有するコンサルタントも在籍していることから、抽出する課題の精度やソリューション選択の妥当性という価値を提供可能です。

プロセスマイニングによるアプローチ方法としては、業務改善の一環としてやDXの一環などさまざまなアプローチ方法がありますが、どういったアプローチをTIS様では想定していますか?

通り一遍のアプローチ方法ではなく、お客様の課題感やニーズに応じて、最適なアプローチ方法を検討します。一例を紹介すると、事前にお客様の業務上の課題仮説と改善効果イメージを準備しておき、それをベースにお客様と具体的な会話が出来るようにしています。

 

社内において実施したパイロットプロジェクトの概要と得られた効果を教えてください

受注管理プロセスを中心にプロセスマイニングツールを用いた分析を実施し、ビジネスサイクルの最適化や失注の抑制により、年間約40百万円の効果を見込んでいます。

 

TISでの今後の課題・チャレンジについて教えてください

今後は、システム刷新時の現状業務分析や分析後のAIによる自動化提案、TIS既存サービスとプロセスマイニングを組み合わせたサービスの提供を予定しています。それらも含めて、今後5年間で30億円の売上、グループ全体でコンサルタント200名体制の構築を目指します。

 

APMJへの期待を教えてください

プロセスマイニングに関心がある企業や専門家が集まる場として、具体的な課題や悩みを共有できるプラットフォームになることを期待しています。さらに、APMJを通じて、プロセスマイニングの活用範囲が広がり、新たなビジネス機会の創出に繋がれば良いなと感じています。

文責:堀越晴琉

[1] システムインタグレーター:システムの設計・開発・運用・保守を行う企業