pocお問い合わせ 一般ユーザー会員募集中 お問い合わせ

インタビュー

【Celonis社】村瀬社長によるデジタル変革の展望

この度、12月よりCelonis日本支社の代表取締役社長に就任された村瀬 将思様に取材をさせていただき、村瀬社長の価値観から、プロセスマイニングや今後の日本企業とデジタルについてまで様々な観点からのお話をいただきました。

 

―村瀬社長のこれまでのキャリアについて

 

幼少期は2年間、親の海外赴任でカナダのケベックに住み、現地の小学校に通っていました。学校では英語、街に買い物に行くとフランス語という環境で当初どちらも話せなかった訳ですが、今思えばここでの経験がその後の人生において、特にグローバル環境で働くにあたり、かなり役に立っていると思います。

私の最初の就職先は日本企業でした。当時の日本人は「働くこと」が全てであり、残業することが良しとされる風潮があり、18時にオフィスから帰ろうとする人達がいると「だから業績を出せない、結果が出ないのだ」と見られることが当たり前のような時代でした。今でこそ「サステナビリティ(持続性)」という言葉がこれだけ騒がれていますが、当時は真逆の方向に向かっていた時代であったのだと思います。

そして、2000年にインド本社のグローバルITベンダーに転職しました。父親の影響もあり、やはりグローバル環境で仕事をしたいと考えたからです。そこではインド人ばかりの業務環境で、インドの優秀な技術者とともに分散型の開発体制で安価かつ迅速に様々なITプロジェクトを提供しておりました。ここでかなり自分の価値観が変わりました。グローバル環境で活躍するインドの社員たちは、何が何でも勝とうとする。そういうハングリー精神に富んだ人たちでした。そしてバケーションの間は十分に家族と過ごす。メリハリの効いた人生を送っていました。一方で私は入社当初、グローバルな英語環境でのミーティングになると伝えたいことをうまく伝えられない、議論にもうまく貢献できない状況にあり、「日本人は優秀で、もっとグローバルの世界でも戦えるはずなのに、自分は何もできてないのではないか」と非常に悔しい思いをしたのを今でも覚えています。この時点で、グローバル環境でも日本人は役に立てると証明したい、また日本人のリーダーシップを何としても見せたいという強い思いを持ちました。

その後は、日本HP(株)で最終的にソフトウェア事業統括本部の役員まで務めた後、2016年からはServiceNowの社長として日本企業、社会のデジタル変革を進めてきました。

 

―そのような経験で培われた価値観・人生観

 

価値観として、皆さんにお伝えしたいことがあります。グローバルの環境で働いていると、日本が様々な観点で違っていることに気づきます(笑)。高度経済成長の時期は、夜中まで家庭も顧みず働き続けて成長した訳ですが、そういう時代はもう過ぎました。例えばGDP(国内総生産)で見ると、継続的に成長し続けるアメリカ・中国などと比べて、日本は全然伸びていません。日本は人口もどんどん減っていますし、このままではまずいと思いますよね。日本が生まれ変わらないといけないタイミングが来ていると思います。

 

―キャリア形成・企業選び

 

働くことは慈善事業ではないので、お金を稼げなければ生活ができません。一方で経済的な理由だけではなく、「働く意味を持てるか」が私のキャリア形成において非常に大きな軸でした。グローバル社会から取り残されている日本にテクノロジーを通じて変革をもたらしたいという志と共に、家族や自分に誇れる仕事ができているかどうかを常に考えながらこれまで経験を積んできました。また企業選びに関しては、転職それ自体に対して良し悪しはないと思います。その会社に自分のやりがいがありミッションを達成できるかを軸にすることが重要です。この軸に沿って、会社に縛られず対等な立場で仕事をするために、自分だけの専門性と付加価値をつけていくことが今後大切になると思います。

 

―村瀬社長の原動力

 

私は今50歳なので、キャリアはあと10年です。子供は4人おりますが、この先のキャリアでは彼らのためにも新しい日本の未来を作りたいなと思っています。自分のキャリアの30年間を見ると、日本のGDPはずっと平坦であり、「失われた30年」と言われています。ここまで一生懸命働いてきましたが、残りの人生で更なる日本経済の発展や明るい未来に貢献したいと思っています。

4人の子供達は小学3・4年生頃になると「パパはどんな仕事をしているの?」と皆聞いてきました。長女の時は、先ほど説明したインドの会社に勤めていたので、「パパは日本の物づくりをインドの人達と速く、安く作っているのだよ。」と説明しました。ここでふと気付いたのは、これは国内のIT業界の空洞化を推し進めてしまっているのではないか?ということです。子どもに聞かせて夢がある仕事ではないな、と感じました。しかし、今なら「パパはデジタルを使って人の働き方を変え、人は人でしかできない仕事をし、生産性をあげて、持続可能な働き方をしていけるような世界を作っている」と言えます。これは家族にも「いい仕事をしているな」と感じられますよね。

最後はやはり家族や友達など「人」が中心になるべきで、自分の子供や社会等に貢献できる仕事が私にとっては非常に重要なことです。社員にも、お金を儲けるためだけではなく、「奇跡的なほどやりがいのある仕事」をしようという話を常日頃からしております。

 

―生産性を上げるプロセスマイニング

 

7年程前、政府が働き方改革を政策として打ち出しました。残業は何時間までしかダメとか、有給は必ず取らせなさいとか、働き方自体をもっと柔軟にしなさいということでしたが、結果「時間」ばかりを制約した訳です。働き方を変えないのに時間だけ短縮したら生産量が減りますよね。同じ生産性で時間が短くなりますから、生産量も減ってしまうのは当たり前であり、これでは本末転倒です。ですから、この「失われた30年」を何とかするためには効率を上げるしかないのです。そのためにはデジタルを使う以外に道はなく、まさにプロセスマイニングはこのデジタル活用の司令塔になります。End to endでのプロセスを可視化し、業務上での見えない無駄(Silent Killer)をあぶり出し、デジタルの力で無駄を排除し、業務を自動化することにより生産性をあげることを可能にするのがまさにプロセスマイニングの力なのです。

 

―真のデジタル変革

 

まず、今まで紙でやっていたことをスマホでやれば「デジタル変革」という訳ではありません。それはただのデジタイゼーションです。今まで10個のステップが必要であった仕事を、デジタルを使って3個のステップでできるようにやり方自体を抜本的に変革させることが出来てようやく「デジタル変革」だと思います。Uberは皆さん知っていますよね。例えば、オムライスを食べたいと思った時には、外に行かずに家にいながらスマホで人気店をパッと出して比較できます。注文したら、登録したクレジットカードで支払いをするので現金も不要で、何時何分にデリバリーが来るのかも分かります。さらに、配達員に対してレーティングもできます。1回注文したら、次からは全て記憶されているため「おすすめ」も出てきます。このような付帯サービスがあるのでUberはとても便利であり、プロセスが徹底的にシンプルになっているため素晴らしいユーザ体験を得ることができます。これがデジタルの力なのです。

現在、コロナで飲食業界はかなり勝ち負けが決まってしまっており、従来通りのやり方でお店を営業している方々はかなりつらい思いをされています。一方で、Uberなどのプラットフォーマーは独り勝ちしており、これがデジタル変革の力だとつくづく感じます。これからもコロナが突然消えることはおそらくなく、ウィズコロナの時代がしばらく続きますので、現在のような世界でも元気に生きていくためには「デジタル変革」が必要になるということを是非とも知って欲しいです。

 

―日本の現状とその問題点

 

日本は「デジタル変革」という営みの中でも、「変革」がうまくいっておらず、単なる「デジタイゼーション」または「デジタライゼーション」止まりのケースが多い様です。今まで紙でやっていたことを単にエクセルに変えたり、メールに変えたりと、何らかのシステムに変えているだけで、プロセス自体を根本的に変えていないのです。これは日本全体が変化を嫌う気質であることも原因にあると思います。「デジタル化」はできても「デジタル変革」は起こせなかった。ですから、UberやNETFLIXのような会社が日本から生まれない。デジタル変革を武器にまったく新しいビジネスモデルで歴史的な業界縮図を変えてきた会社をDisruptor(破壊者)と言いますが、そんな会社が日本からはあまり生まれていないのが現状です。また、日本にはデジタル変革を推進するためのデジタル人材が欠けていることも大きな要因です。真面目な人は多いが、今までの固定概念をぶち壊すような天才肌の人が少ない。それは日本人の真面目な性格が起因しているのかもしれません。さらに、世の中ではデータが物凄い勢いで増加しています。皆がデジタル化を進めたことにより、データは膨大にあるのです。しかし、そのデータを使って何か新しいことをやろうというところまではたどり着けていない、というのが今の日本の現状です。

 

―Celonis社で行なわれていること

 

例えば、営業が注文書を受領しました。次は、物やサービスを提供します。そして今度は請求書を出して代金を振り込んでもらいます。これがよくある通常の業務プロセスで、Order to Cash(O2C)と呼ばれます。しかし、このO2Cが1つのシステムですべてサポートされることはほとんどありません。日本も含めた世界中で、注文はこのシステム、製品を出荷するのはこのシステム、請求書を出すのはこのシステム、入金確認をするのはこのシステム、とバラバラになっていますから、どこで何が起きているのかがよく分からない。プロセスを最適化しようとしても、そもそも無駄がどこにあるのかさえ分からないのです。

日本は縦割り組織で、各部署が各々の仕事をやっているが故に、例えば複数部署で同じプロセスがあっても気づかない。その上、現場が強く自分たちのプロセスを変えたがらない人たちが多いので、なかなか全体最適ができないのです。今までBPR(Business Process Reengineering)を色々な企業が推進してきましたが、日本は個別の部署が強いためそれぞれが思うようにやり続けてしまい、全体のプロセスを最適化できませんでした。個別の部署が一生懸命働いて、皆で無駄なことを気づかずにやっていたわけです。

一方で、プロセスマイニングは各ITシステムのログを使用します。システムは何らかの処理をした際に必ず記録(ログ)を残します。この中に「誰が何をいつやったか」という情報が入っています。この情報を全部つなげれば、その業務を端から端まで可視化できます。レントゲンのように、どこか悪いところはないかと診断できるのです。具体的に、何件のプロセスが正常に処理され、どれくらい時間がかかったのか、例外の処理が何件あったのかということが全て可視化され、そこからCelonisはAIや機械学習の機能を使い、問題箇所の把握、原因特定から解決までを導く訳です。

 

―デジタル変革に必要なもの

 

デジタル変革では「時間」という要素が極めて重要になります。Velocity(スピード)があり時間が正確であれば顧客の満足度が上がる。つまりExperience(体験)をあげることができます。さらにIntelligence/機械学習により、デジタルは時間をより正確に予測・予兆できるようになりました。これらのスピードと体験、そして機械学習といった頭脳により、デジタルサービスは非常に便利になり、我々はその虜になるわけです。プロセスマイニングでは誰が何をしたのか、処理日時を全て記録しています。つまり“「時間」を制御できる”訳です。従来はこのような技術はありませんでした。

さらに現在、グローバルでITシステムから生成されるデータ量が飛躍的に増えています。直近の十年でデータ量は32倍となり、64ZB(1ZB=1兆GB)という天文学的な数字にまで届いています。そして今後10年でさらにデータは増えていきます。プロセスマイニングはログデータを扱いますので、データ量の増加は非常に重要なポイントです。データを活用し、機械に任せることが出来る分野を徹底的に機械に行わせることで、クリエイティブな仕事やコミュニケーションなど人にしかできない仕事に人は集中することができます。これから私たちは人間の付加価値を高めていくことに時間を使っていかなければなりません。

 

―プロセスマイニングの今後の可能性

 

世の中でも話題になっているように、サステナビリティ(持続可能性)にもプロセスマイニングが絶大な効果を発揮します。例えば、世界では食品の40%がロス(無駄)になっており、これが世界中で三番目に大きな炭素排出の元となっている訳ですが、これら食品の無駄の80%はプロセスの非効率性に起因するもので、消費者の嗜好や挙動によるものではないそうです。プロセスマイニングでプロセスを最適化し、ポストコロナに向けた新しいビジネスオペレーションを再定義することにより、この分野でも大きくサステナビリティに貢献できると考えます。

また、Celonisは日本に上陸してまだ2年ですが、既に海外では多くの先進事例が輩出されています。日本国内ではCelonis CXO Clubを立ち上げ、大手企業のCXO(役員)の方たちにご賛同いただき、Celonisのグローバル最新事例をご紹介する取り組みも行っていきます。まずは海外事例を取り入れ、その後は日本国内でのノウハウやユースケースを海外にもアピールしていきたいと思っております。

 

これまでに述べたプロセスマイニングの可能性と、お客様からいただいているポジティブなご意見を鑑み、私はあらためて、プロセスマイニングが日本社会のDXの最後のピースになると確信しています