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インタビュー

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【UiPath】長谷川CEOの考えるプロセスマイニングと日本の未来

この度、一般社団法人プロセスマイニング協会の正会員就任に際しまして、RPAやAIによる自動化ソリューションのグローバルリーディングカンパニーであるUiPath株式会社の代表取締役CEO・長谷川 康一氏に、プロセスマイニングの重要性や日本における現状・課題・展望などをお話しいただきました。

 

-はじめに、UiPath社ではプロセスマイニングの重要性についてどのようにお考えでしょうか?

我々は、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)とAIの技術をベースにした、新しいデジタル時代の自動化プラットフォームを提供している会社です。私個人としてもUiPathとしても、プロセスマイニングの可能性は当初からとても強く感じていました。効果的で大規模な業務の自動化を実現するためには、業務の課題を発見するプロセスマイニングはなくてはならない手法です。RPAとAIの連携によって自動化可能な業務領域が拡大したり、クラウド化によって自動化の選択肢が広がったりと、私たち自身で「自動化」の範囲を広げていく中で、プロセスマイニングを取り入れることは必要不可欠でした。

2019年にはUiPathがプロセスマイニングツールのベンダー企業を買収し、グローバルでプロセスマイニングを提供するようになりました。この買収にあたっては、日本からも米国本社に対して、日本のお客様や日本社会のデジタルトランスフォーメーション(DX)にとってプロセスマイニングが非常に重要になるという意見を出しました。

日本でプロセスマイニングツールの販売を開始してからは、大変多くのお客様とお話をさせていただいております。多くのお客様に興味を持っていただいていますが、プロセスマイニングの日本市場での広がりはこれから伸びていくと感じています。プロセスマイニングというコンセプト自体は以前からありましたが、それを手法として実践できるソフトウェアが日本に入ってきたのは4年程前です。その頃はまだプロセスマイニングという手法に馴染みのない方がほとんどでしたので、三菱総研でセミナーを開催してその重要性や効果を解説したりという地道な活動から始めました。それが3〜4年経ち、今では当時と比べると、関心をお持ちいただける方も増えてきていますが、プロセスマイニングの持つポテンシャルの大きさを考えると、まだまだこれからであるとも思っています。

 

-UiPath社ではe-Learningを無償で提供されていますが、どのような方の利用が多いですか?

UiPathでは、UiPathアカデミーという無料のオンライン学習サービスを提供しています。現時点では、UiPathが以前から提供しているRPAやAIを使ったツールを導入する企業が、自動化のプロジェクトに関わる社員の方のトレーニングとしてUiPathアカデミーを利用されていることが多いです。UiPathアカデミーはUiPathが提供している製品のラーニングにご利用いただくものですが、具体的なツールの利用方法だけではなく、コンセプトを紹介するコースやプロジェクトの進め方などの考え方を学べるコースも増えてきています。そのためツールの使い方だけではなく、考え方や取り組み方まで一つのプラットフォームで学んでいただけるという利点があります。また、UiPath Certified Professional(UCP)というUiPath認定資格も設けており、試験を受けて資格を取得いただくことができます。

UiPathを含めRPAや自動化ソリューションの導入が拡大している中で、それらの使い手である人材の需要も非常に高まっています。社会全体でDX人材が必要になってきていますし、その育成も急務です。私は今後、RPAやAIを使える人材であるということが転職や就職に有利になるような社会になると考えています。また、今後は大学の授業などでも取り入れられるようになり、社会人だけでなく学生の中でも自動化の利用が広まっていくのではないかと思います。

プロセスマイニングについても例外ではなく、大学や他の教育機会でプロセスマイニングを学ぶことが人材としての価値向上に繋がると思います。

 

-現在の日本におけるプロセスマイニングの広がりは、どのような状況でしょうか?

AIの活用が身近になりあらためて企業の保有するデータの活用が注目されている中で、業務の課題発見もデータを利用して事実に基づき論理的に、迅速に行うという考え方のニーズが増えてきていると思いますし、そこに注目する日本の経営者も増えています。

お客様にプロセスマイニングのお話をさせていただくと、とても興味を持って聞いていただけます。これはなぜかというと、従来の取り組み方では限界があるからです。

ここで私の経歴について簡単にお話すると、コンサルティング会社のアーサー・アンダーセン(現アクセンチュア)でキャリアを始め、その後はゴールドマン・サックス、ドイツ銀行、バークレイズ銀行等の金融機関でITの仕事をしていました。バークレイズ銀行では、シンガポールでアジア太平洋地域の最高情報責任者(CIO)を務めていましたが、約1万人のスタッフを抱え、銀行全体の3分の1ほどのシステム開発や保守運用の責任者をしていました。そういった経験から身にしみて理解しているのですが、例えばシステム開発を例に取ると、従来のシステム開発の現場の手法は、とにかく基本的には既存プロセスのインプットとアウトプットを見て、ユーザーにインタビューし、業務を理解してシステムに落とし込むという形態だったんです。

仕様の作成はユーザーへのヒアリングがベースで、システムエンジニアやビジネスアナリストがユーザーのところへ行き、ユーザーがおこなっている業務についてインタビューをしていました。何をやっていて、どのようなインプットが必要で、どういう画面にどんな情報を入れ、どういうアウトプットが出てくるかを一つひとつ確認し、その回答結果を元に、中心にはどのようなプロセスがあるのかを理解して、システムを作るというプロセスを取ってきたのです。でも、そのようなやり方にはやはり限界があります。時間もかかりますし、プロセス全体が網羅できるとも限りません。現在のデジタルの世界では、いわゆる「データ駆動型」で、データを中心として実際に何が必要かを考えていくというのが主流です。そのデータを作るための処理、プロセスが何かということを考えるときに、それぞれのユーザーが自分の業務範囲で知っていることだけをヒアリングしてゼロからプロセスを起こすのではなく、実際の業務プロセス自体をデータで解析して、業務プロセス全体でどういう動きがあって、何を変えるべきかを判断することが非常に重要ですし、今日本の経営者の多くもそのように考えています。プロセスマイニングによるディスカバリーは、データを活用して効果的に・効率的に業務課題を発見できるという点で、非常に重要になってきているんです。

 

-海外と比較すると、日本ではプロセスマイニングの導入が遅れている印象があります。長谷川CEOがお考えになる日本企業の課題や改善点を教えていただきたいです。

コロナ禍でアメリカと日本は大きな差が開いたと感じています。その変化への対応の遅れの原因として考えられることの一つが、組織の面で言うと「粘土層」と言われる中間層の存在です。古い価値観を持ったまま変化に対応できない中間層のことで、主には経営と現場の間にいる中間管理職のことを指しますが、経営層や若手と比較すると、粘土層である中間層はこれまでの成功体験からリスクへの感応度が低くなっていると考えられます。日本のDXは、経営リスクを感じている経営者と新しい事を始めたい若手社員の間にいる中間層が粘土層になっているために遅れてきていると思います。今までの仕事のやり方で成果を上げてきた人達に対して上から目線で業務の中身についてしっかり理解もせず「変えて下さい」と言ったり、あたかも今までのやり方を頭ごなしに否定する形では中間層の人たちがやる気をもって変わったりはできません。その中でデジタルで対応しなければいけない仕事がどんどん増えていき、この時代の変化の中で現場は疲弊し、さらにDXへの対応が遅れるという状況です。これはトップダウンなジョブ型を採るアメリカと異なり、日本の企業はボトムアップであることも関係していると思います。しかしながら、本来現場はイノベーションが生まれる場所でもあります。現場でプロセスマイニングやRPAが実装され、納得感をもって中間層が自ら変化へ対応していけば、日本のDXは大きく加速すると考えています。

 

-具体的に、どのような場面でプロセスマイニングは活用されているのでしょうか?

今では、金融機関や製造業など、あらゆる業種でプロセスマイニングを使い始める企業が増えてきています。金融機関の事務センターにおいて、様々な申し込みや、変更の事務の処理を効率化するために、製造業において、資材の調達を効果的に管理するための処理の流れを再構築していく際に、エンドツーエンドで例外処理も含めて業務プロセス全体の理解と、正しい業務プロセスのあり方を検討するケースなどです。

今、企業においては、複雑な処理を、大量にリアルタイムでこなしていく時に、ヒューマンエラーをいかに防止・管理するかということがすごく大事になります。インシデントが起きてしまってから何が駄目だったのかを振り返って考えるのではなく、「オペレーショナルリスク管理」の中で、現在のプロセスの中のどこにどのようなリスクが潜んでいるかを探し出すことが非常に重要になります。ここにも、プロセスマイニングが使われるようになってきているのです。

データ駆動を実現し業務プロセス全体を理解するための手法としても、リスク管理の方法としても、経営者・現場の人々両方にとってプロセスマイニングが重要になってきています。

 

-各社からさまざまなプロセスマイニングツールが発表されていますが、導入事例がまだまだ少ない現状において、どのような基準でツールの選定を行えば良いのでしょうか?

ツールを選択する際に、「プロセスマイニングでどういう成果を実現したいか」というゴール設定をすることが重要ではないでしょうか。私は、プロセスマイニングで解析することだけが目的ではなく、その解析の結果に基づいてすぐにアクションをしていく事が重要だと感じています。プロセスマイニングがRPAやAIを掛け合わせた業務の自動化につながることで、成果を出す事が必要ではないでしょうか。

また、ツールを習熟するための支援体制がどの程度整っているのかということも重要です。プロセスマイニングのツールを活用する上で重要なポイントは3つあると考えています。はじめに、プロセスマイニングに利用するデータをシステムからログとして取得することができるかどうかという点です。分析目的に沿ったデータを取得する必要があるからです。次に、実際に取ったログからプロセスを可視化し、業務フローの流れやボトルネックなどの課題を理解する必要があります。そして最後に、見つかった課題に対してどのような改善を行っていくべきかを検討することです。この三点を踏まえてプロセスマイニングのツールを扱える人材が、日本にはまだまだ不足しています。決して難しいことではありませんが、簡単なことでもありません。ツール自体の機能や利便性だけではなく、この人材を育成するためのサポートや学習支援があるかどうかが重要なポイントだと考えています。ツールを提供する会社としては、ユーザーの方に使っていただきビジネスの成果をもたらすために、ユーザーをしっかりサポートする体制を整えることが重要だと考えています。

 

-依然として、日本では海外に比べて、学問としての「プロセスマイニング」に関する研究者や学生が少ないと思われます。日本でも今後は活発なコミュニティを形成していくことが重要だと考えられますが、どういった展望をお持ちでしょうか?

私も全く同じように考えています。基本的にプロセスマイニングの広がりは、水が高いところから低いところに流れていくように、自然と起こっていくものだと思っています。ただ、その流れをもっと加速させて、特に欧米に差をつけられないようにするためには、やはりコミュニティのような存在ができていけば良いのでしょうね。

個人的な話になりますが、私は日本酒と温泉―特に秘湯が大好きなんです。それで驚いたことがあったのですが、LINEのオープンチャットという機能で「日本酒」「秘湯」などのキーワードで検索すると、 日本酒や秘湯が大好きな人が集まって情報交換をするコミュニティがあります。オープンチャットで「今度こういう秘湯に行きたいです」と相談すると、3分もしないうちにオープンチャットのメンバーが「ここがいいよ!」「こっちもいいよ!」とおすすめを返信してくれるんです。

もちろん、そういう人たちはお金をもらっているわけではありません。でも、好きだから話をしたいし、情熱を持って情報交換している。そのようなコミュニティを通して、さまざまな人と繋がることによって、自分の勉強になり、刺激を受けることができます。このような横のつながりは、やはり重要だと思います。プロセスマイニングやAIなど、技術の民主化の重要性が謳われていますが、このようにファンが集まりコミュニティがどんどん増えて大きくなっていくということこそが、本当の民主化だなと感じています。

 

-「プロセスマイニングを学ぶ」となると、一部の文系学部出身の方は敬遠してしまうこともあると思います。長谷川CEOも法学部出身ということで、文系の学生がデータサイエンスやプロセスマイニングを学ぶ意義などに関して、どのようにお考えでしょうか?

デジタルを学び使いこなすということは、理系・文系に関わらず必須なことになってきていると思います。これまでの日本社会では、優秀な人が決まりきった特に事務の仕事に「手錠と足かせ」をされてしまい、どんどん創造性がなくなってしまいました。それに伴って、様々な遅れが出てきてしまったんですよね。

そうではなくて、アナログ的な仕事から抜け出して、一人ひとりがデジタルに向かい合って、仕事の生産性を上げて、付加価値を高める意識が必要で、デジタルツールの取得をする必要があるのではないでしょうか?

私自身も、卒業したのは法学部でしたが、コンサルティングファームに入社したあとは理系・文系は全く関係なく、理系の方々と一緒にプログラミングをし、切磋琢磨しました。どの学部を専攻するかは全く関係なく、プロセスマイニングやデジタルに触れ、それを活用することは、今後の社会では必須のことだと私は思います。

 

-プロセスマイニングやRPAを普及させることを考えたとき、日本の土壌・風土はどのような意味を持つとお考えでしょうか?

すごく期待できるなと思うところと、やっぱり難しいなと思うところがあります。まず、難しいなと感じるのは、日本の仕事のやり方です。これまでは、いわゆる「メンバーシップ型」で、同じ人間が色々な仕事をやって、阿吽の呼吸で行間を読むような、結構ふわふわとした中で仕事をやっていました。そして今、デジタルの世界になって、その生産性の低さが問題になっています。他にも、人事的な問題、昇進や人材開発、人材活用がうまくいっていないという制度上の問題もあります。先ほどの粘土層の話にもありましたが、古いやり方に慣れていて、それで成功してきた人たちがやり方を変えたがらないというのは、欧米と比べると、イノベーションや変革にとってプラスにならない側面だという気がしています。

一方で、どんどんAIなどの技術を取り入れてデータを活用しても、それもコロナ禍の今非対面・非接触であらゆることを画面の上でAIの数字だけで判断し、現場の声を取り入れないというのは、必ずしもベストではありません。技術の利用にはバランスが必要で、データが示すところと、現場の声のようなものを総合的に判断していくことはこれからも重要だと思います。

日本のカルチャーに期待できる点としては、日本の現場の、相手を思いやる気持ち(エンパシー)があると思います。日本は、現場でお客さんのことを考えて行動できる人が多く、品質に対するこだわりも強いです。これは日本の強みだと考えています。

ただ、これも注意が必要です。おもてなしの気持ちがあるから、お客さん毎に個別プロセスを作ってしまって、全体として非効率になり、手作業だけでは対応できなくなってしまう。品質にこだわって、一回ミスをした部分にダブルチェックのルーチンを入れて、このダブルチェックをただ人力でやり続け、プロセスにかかる時間が長くなっていく。こうした事態は日本の現場では往々にして起こっていると思います。

デジタルの民主化の中で、そのような事態に直面している現場の人自身が変わっていくということが起きれば、圧倒的な力を発揮できる可能性があります。結局、デジタルは人間の力を圧倒的に増強する価値を作り出すことです。そのとき、相手を思いやる気持ちや品質に対するこだわりがあれば、ものすごく生産性やカスタマーエクスペリエンスを上げることができますよね。

 

-デジタル社会の中で、個人の生き残りを賭けたスキル刷新はどのように行なっていけば良いのでしょうか?

これからさらに新しいデジタルネイティブの方が社会人になっていく中で、今の20代・30代が「化石みたい」と言われてしまう可能性は十分にあります。ビジネス全体がデジタル化していく中で、ニーズに最適なアウトプットを出すためには、いかにデジタルを「自分ごと化」していくかが重要です。AIやデジタルに関する本を読むだけではなく、実際にツールを使いデジタルの世界に触れていかなければ、生きたスキルを身につけることは難しいと思います。英語についても、いくら文法を学んでも、実際にコミュニケーションが取れる生きた英語を身につけられないのと同じです。他人任せではなく、プロセスマイニングやRPAのデジタルロボットなどを自分で使いこなせるかが分かれ目になるでしょう。技術革新が激しいデジタルの世界で、どのツールが自分に合っているのか、ニーズに応えるために最適かを判断するためには、どれだけ自分の手でそのツールを触ったかがキーになると思います。

 

-最後に、業種を限らず、さまざまな日本企業がプロセスマイニングを導入していくことによる今後の日本の可能性や展望をUiPath社としてどのようにお考えかお教えください。

実は、私は当初、日本でプロセスマイニングが流行るまでにはかなりの時間がかかるかなと思っていたんですよ。でも最近になって、結構なスピードで広がり始めたという感覚を持っています。この間もある経営者の方に、「長谷川さん、本当にありがとうございました。プロセスマイニングの導入以降、みんなの意識が確実に変わっています。」とおっしゃっていただきました。多くの人が以前と比べてプロセスマイニングの重要性、必要性を感じるようになってきていると思います。

個人的には、企業のトランスフォーメーションに、まずビッグデータを用意しないと、データ駆動型の変革ができないということはないと思っています。自分のやっている業務をプロセスマイニングで可視化して、「やっぱり現状はこうだったんだ、今後はこういう風に変えていこう」と考え、さらには自動化を導入していく、それがグループ、全体に積み上がっていくというような流れも、とても有効な方法だと感じています。

日本は、今後ますます少子高齢化が進み、労働人口が減少するという問題を抱えています。しかし、新しいデジタルネイティブがどんどん入ってくることによって、会社のカルチャーが変わり、DXが進んでいけば、生産性が上がり、日本がとても元気になる可能性は十分にあると信じています。

 

-貴重なお話をお聞かせいただきまして、ありがとうございました。