【日立システムズ】業務DX支援におけるプロセスマイニングの効果と活用のポイント
今回は、プロセスマイニングを活用した業務DX支援を提供する株式会社日立システムズの自社導入取纏め(渡邉様・中島様)、お客様導入支援(安永様・金井様・梁様)の皆さまにプロセスマイニング導入の経緯や、業務DX支援における効果、活用のポイントについてお話しいただきました。
―初めに、御社について簡単にお教えいただけますか?
渡邉様:日立システムズは、強みであるさまざまな業種の課題解決で培ってきたお客さまの業務知識やノウハウを持つ人財が、日立グループ各社やビジネスパートナーと連携してOne HitachiでLumada事業を中心に展開することにより、お客さまのデジタル変革を徹底的にサポートしています。そして、日立グループのサステナビリティ戦略の下、環境・社会・企業統治(ガバナンス)を考慮した経営を推進することで、国連が定める持続可能な開発目標SDGsの課題解決に向けた価値を創出して、企業理念に掲げる「真に豊かな社会の実現に貢献」をめざしています。
詳細は https://www.hitachi-systems.com/ をご覧ください。
―御社におけるプロセスマイニング導入までの経緯と数あるプロセスマイニングツールの中でCelonisを選ばれた理由をお教えいただけますか?
渡邉様:当社では、2009年頃からプロセスマネジメントの重要性に着目して、当時BPMツールの導入を行って業務分析を進めていましたが、2011年の会社合併に伴い経営システムの統合が必要となりました。この時、当時のBPMツールにおける性能問題と組織変更に追従できないという問題が顕在化したことと、合併に伴うIT統合、コスト最適化の取り組みを優先せざるを得ないことからBPMの活動を断念した経緯があります。
IT統合・コストの最適化の取り組みを進めながらも「プロセスの継続的改善を進めたい」「プロセスマネジメントスキルの強化を図りたい」という当社経営効率化に向けた課題解決への思いがありました。また、当社のSE事業部門にも、ITサービス会社としてお客さまへのプロセス改善に向けたご提案への課題があり、その中で2019年にCelonis(セロニス)のプロセスマイニングサービスと出合いました。
2019年当時は、RPAが一気に広まり部分的な改善が進んでいましたが、我々IT本部は、これからは部分最適化だけでは厳しく、プロセスに切り込み、業務課題の本質に関わっていく必要があることを強く考えていました。また、プロセスマイニングのノウハウ獲得・コンサル力強化を進めたいというSE事業部門との想いが重なり、圧倒的なレスポンスと優れたユーザビリティ、分析テンプレートの充実、分析に対応した豊富な機能などを目の当たりにし、当社のプロセスマイニングツールとして「Celonis EMS (Execution Management System)」(以下、Celonis)を採用することを決定しました。
―実際にCelonisを導入されてから、どのような印象を持たれましたか?
中島様:一言でいうと、導入してとてもよかったという印象です。
私たちは元々、プロセスオーナー(業務主管元)に所属し、社内業務を取り纏めていました。そのような部門にいると、「こういう課題がある」というのは、経験則や現場からの声で分かるのですが、データとしては捉えづらく、可視化できないという課題がありました。そういった課題に対して、プロセスマイニングを導入することによって、具体的な事実(データ)として課題が存在しているということを客観的に把握することができ、反対に課題として認識していたものが、実はデータから見るとそこまで課題ではなかったということが、“ファクトデータ”として客観的に把握できるようになりました。事実(ファクトデータ)が、客観的に分かると言うことは、プロセスマイニングのメリットだと思います。先ほど申し上げました「存在すると思っていた課題が、実は分析してみると課題では無かった」という場合が出てくることがありますが、そういったトライアンドエラーの分析を繰り返すことによって、業務の効率化や問題点のさらなる発掘につながるのではないかと考えています。
―プロセスマイニングの導入当初はデータが煩雑な場合もあるかと思うのですが、データ生成に関して、苦労したり、気づいたりした点はありますか?
中島様:気づかされた点と言う意味では、システムデータの記録に関して、アクティビティのスタートの記録がないことでした。例えば、「受注伝票の登録」のデータでは、「登録しました」というデータはあっても、「登録をスタートします」という記録がありません。通常のシステムでは、アクティビティの最後の記録しかなく、業務単体のスタートからエンドまでを記録していません。業務間のつながりは、アクティビティのつながりで分かるのですが、業務の開始(例えば、受注伝票の登録開始)を意味するタイムスタンプがあると、どれくらいその業務に時間をかけているのかが分かるので、より課題の発掘・改善がしやすくなると思います。プロセスマイニングの導入を通して、その点を意識したシステムの作りが大事だということに気づかされました。
―Celonisパートナーの中で、御社ならではの特徴・強みはどのような部分でしょうか?
梁様:当社ならではの特徴は大きく三つあります。
一つが、自社で率先して色々な業務にプロセスマイニングを適用しているという点です。かなり先行して適用を進めていましたので、そこから得られたノウハウを蓄積できています。
二つ目としては、SIer出身のエンジニアが多く在籍しておりますので、そういったSIer経験から培ったデータの編集・加工のノウハウを生かし、スクラッチシステムに対するCelonisによる業務の可視化の実績を多く持っています。
そして、三つ目の強みは、日本で唯一Celonis社の認定トレーナーの資格を持っているという点です。資格を生かして、ユーザーの自立支援もしっかりとできるようになっています。
―業界・業種問わず幅広い分野に対応可能とのことですが、実際の現場では、どういった業界の方がプロセスマイニングに興味を持たれていることが多いでしょうか?
金井様:グローバルでも同様の傾向があると思いますが、製造業からの案件が一番多いです。具体的には、「DXを推進するにあたって、どこからやればいいのか分からない」という相談が多くあります。また直近ですと、金融業界、特に保険会社からPoC(Proof of Concept:概念実証)を試したいという引き合いをいただいています。
―お客さまの中にはプロセスマイニングに対して過剰な期待を抱かれている方も多いと耳にしますが、いかがでしょうか?
金井様:プロセスマイニングについてあまり知らず、キーワードから興味を持たれた方は、「魔法のように今まで見たことのない気づきが得られる」という様な過剰な期待をされるお客さまもいらっしゃいます。
ただ、業務改善を実施したいとお考えになっているお客さまの多くは、プロセスマイニングの特徴である“SAP等とのパッケージと親和性が高く、短期間でデータから客観的に事実(ファクトデータ)が把握できる”などのプロセスマイニングとしての特徴を理解されたうえで、Celonisを導入したいというお客さまも多くいます。
―プロセスマイニングを導入する際の障壁などはありますか?
安永様:これは市場全体の課題と言えるかもしれませんが、PoCで止まってしまうという壁に直面しています。その原因として、先ほどお話もあったような過剰な期待が挙げられると思います。過剰な期待のなかで実際PoCをやってみると、期待以上の気づきが得られず、PoCで止まってしまうというようなケースがあります。
また、日本企業の特色と言えるかもしれませんが、縦割り組織文化の強さも課題として挙げられます。個別最適は進められていても、組織を俯瞰した全体最適の視点や課題感に至ってないのではないかと感じています。さらに、DXの人材不足も全体的な課題としてあると思います。PoCだけでなく、継続的に自分たちで使いこなせていけるか分からないという不安から、導入に意欲的ではないという課題もあります。
―そもそも適用できるデータが存在しないということも障壁としてあると思います。御社では、Celonisの適用可否を検証するサービスを提供されているようですが、こちらのサービスについてお教えいただけますか?
梁様:Celonisを適用可能かという懸念を抱かれるお客さまに対して、我々はチェックリストの提供と適用可否検証サービスの提供という二つのアプローチを取っています。
一つ目のアプローチは、チェックリストに関してです。プロセスマイニングを使いたい時に、どういった観点からのチェックが必要なのかというリストを用意しています。リストを使って一時的な適用可否の判断をしていただきます。
二つ目のアプローチとして、さらに、実際に自分たちのデータでしっかり可視化されるところを目で見たいというお客さまには、適用可否検証サービスをご提供しています。有償にはなりますが、期間を限定してスコープを限定し、まず技術的な検証を実施するサービスです。このように、Celonisの適用可否という点については、チェックリストと適用可否検証サービスの二つのサービスを提供しています。
―プロセスマイニングによって浮き彫りになった問題点を現場に伝える際に、受け入れがたいという反応や、改良するのが難しいという反応を受けることはありますか?
中島様:課題を発見しても、実際の改善にたどり着かないこともあります。
例えば、事業・サービスのある課題に対してプロセスマイニングを実施した結果、その課題に対する質的・量的な解決案ではあるものの、あまりにも大きく業務を変える必要があるものや、作業ミスを防止するため慣れた業務プロセスを変えたくないといったケースがあります。
ただ、別のケースでは、プロセスマイニングの結果から社内システムを改善した結果、システムの利用がとても楽になったと社員の声も聞こえてきます。
最初は改善にあたって摩擦のようなものがあっても、最終的にはユーザーが改善を実感することができ、全社的な最適に繋がっていくのではないかということを実感しております。
―社内では、現場のヒアリングやコンサルティング、データの分析など、どのような体制で業務を行っているのでしょうか?
渡邉様:私たちの部隊は、基幹系業務(販売管理・購買管理・管理会計・財務会計等)と事業系業務(フィールドサービス)の業務コンサルとしてIT本部に所属しています。
先ほども申しました通り、元々私たちは、プロセスオーナーに所属していた経緯があるので、私たちが今の主管元に対して課題の仮説の提案等のコンサル活動を行い、主管元との協議のうえ、分析対象を決定し、IT本部の開発部門にプロセスマイニングの構築を依頼しています。
構築されたプロセスマイニング結果からその内容をプロセスオーナー(業務主管元)と分析し、どのように業務を改善するのか(ルールを改善して業務を変えるのか、業務ではなくシステムに問題があるのかなど)というさまざまな面から課題の発掘・確認を行うことにより業務の改善を進めています。
また、単発的な改善の実施だけはなく、継続的な分析の監視と新たに取り組んだ課題改善施策との組み合わせによる継続的な改善をする施策を進めています。
主管元単独の改善に留まるだけではなく各プロセスオーナー(業務主管元)のつながりを考慮し、全社的な俯瞰による分析・改善も進めています。
―プロセスマイニングにおいて、全体的な俯瞰による視点が重要ということですね。
渡邉様:大事なことは、会社の業務全体を俯瞰してみて、業務のつながりを理解していることです。単一業務のどこにボトルネックがあるのかを見るだけでなく、“その前後業務、全体の業務の流れの中に何か課題が無いか”といったことについても考える必要があります。全体的な俯瞰の視点で、全体最適を中心に考えることが大切です。
―これまでは現場でのお話をお聞かせいただきましたが、これからプロセスマイニングを担う若者にとって重要となる能力を挙げるとすれば、どのようなものがあるとお考えですか?
渡邉様:百瀬さん(当協会代表理事)が仰っていましたが、「業務への理解」が重要になると思います。マイニングだけで情報が整理されて事実(ファクトデータ)が出てきますが、その事実の根幹である業務についての理解がないと、出てきたファクトデータに対して何が課題なのか、何があるべき姿なのかという視点を持てません。業務への知識や考え方という筋をもっていないと、ファクトデータから見えてくる課題を発見するができず、分析の先の成長が無いのかなと思います。
データエンジニアだけではなくて、業務知識・理解を踏まえ、両方のマッチングをさせることで、何が課題なのかが言えてさらに解決に導ける人間になるというのが大事かなと思います。
―プロセスマイニングを活用した今後の事業展開についてお教えください。
安永様:プロセスマイニングを通して、お客さまに寄り添いお客さまの課題解決のサポート、ソリューションサービスの提供・ご支援をしていきたいと考えております。
プロセスマイニングの導入・活用に関しては、最適なツールを組み合わせ、プロセスマイニングのノウハウをどのように活用すればいいのかというお客さまに寄り添ったサポートを丁寧にしていきます。
また、プロセスマイニングと合わせて業務ナレッジ・ソリューションの提案が重要となりますので、プロセスマイニングで見えてきたお客さまの課題に対して、当社のドメインナレッジ・さまざまなソリューションサービスを組み合わせてのご支援をして参ります。
お客さまのDX改革をプロセスマイニングを通して、より良い改善・ご支援をさせていただきたいと我々は考えております。
―貴重なお話をお聞かせいただきまして、ありがとうございました。