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インタビュー

会員企業様へのインタビュー記事・ユースケース

【アビームコンサルティング】大村氏に聞く“Process Optimization Tool”の重要性とこれまでの取り組み


今回は、データドリブンで全業種に対して戦略からIT保守まで一気通貫でサービスを提供するアジア基点のグローバルコンサルティングファーム・アビームコンサルティング株式会社の大村 泰久氏に、アビームコンサルティングにおけるプロセスマイニングを用いた新たなメソッドである“Process Optimization Tool”やこれまでの取り組みの経緯などをお話しいただきました。

 

-初めに、アビームコンサルティングとプロセスマイニングとの関わりをお教えいただけますか?

私たちがプロセスマイニングに注目している一つの要因は、OODAループの適用に則しているという点です。

私がコンサルを始めた20年前は、いわゆる「PDCAサイクル」で、Plan→Do→Check→Actionをグルグル回しながら、業務を改善していくということをやっていました。PDCAサイクルはベースになる物事が普遍的に続いているという前提があり、現状は既知のものとして、計画立案から物事を始めていくというやり方です。

対して、アカデミックな人達が「それでは実態を反映できていない」ということで生まれたのが「OODAループ」という考え方です。これは「Observe(観察)」から始まっており、実態がどうなっているのか、どのように傾向が生まれているのかを可視化し、ある程度の方向付けをして、その上で意思決定をし、行動して、その後にまた観察をするというサイクルです。コロナ禍で不透明な中でも物事を大きく変えていく必要がある中、このOODAループがクライアント企業において必要だという考え方が広まり始めています。 OODAループを回していこうと思った時、最初にやらなくてはいけないのはObserveですが、実はこれをいかに短期間で確実にやるかという点がポイントです。例えば企業の経営基盤の海外展開に対して、今まで私たちは現地に行って、現地の方と会話をして、彼らが持っているペインポイントを理解した上で、それに対して解決策を講じてきました。基本的には対面でのやり取りがベースでしたが、これがコロナ禍で実施できなくなりました。とはいえ、企業の取り組みは止まることは無く、私たちもこの状況下に合わせたアプローチを再考する必要がでていました。当初はリモート会議を駆使し、海外にいる人・リモートにいる人たちとバーチャルな会議方式で進めてきました。大きな改革を進めるためには正しい情報を得た上で、必要な判断をして、アクションをとらなくてはいけないのですが、一方通行で相手側の反応が不明瞭だったり、偏ったメンバーからの意見に引っ張られることが多いと感じていました。そのような課題に対して求められているものが、まさにファクトベースであり、データドリブンであるというようなロジックです。このデータドリブンを実現するのがObserveであり、それを起点とするプロセスマイニングを用いたビジネスコンサルテーションこそが企業にとって価値があると考えました。当社はそういう思考の下、プロセスマイニングに取り組んでいると理解してもらえばと思います。

 

-コロナ禍の影響で、現状調査の方法も大きく変わったとのことでしたが、アビームコンサルティングでは何年前からこのような取り組みを実施されていますか?

私たちがこの取り組みを始めたのは3年前です。まだコロナ禍の前ですが、バルセロナでコマースの仕組みに関する大規模なグローバルイベントがあり、視察に行きました。その際、「モノを選び、カートに入れて、そして最終的に支払いをする」というプロセスが右往左往する状態を可視化するというデモがありました。このデモを初めて見て、慌ててデモをおこなった企業に連絡したというのがきっかけです。

後押しをしたのは私たちのアライアンスパートナーであるべリングポイントです。彼らはプロセスマイニングを僕らよりも10年ほど前に、取り組んでいました。そこで彼らとコンタクトを取り、ノウハウを学びながらビジネスを立ち上げました。

 

-アビームコンサルティングにおけるプロセスマイニングに対する取り組みの経緯をお教えいただけますか?

これまでは、プロセスマイニングで現状どういう事が起きているかということを可視化してきました。

例えば、出荷遅延の問題を実証するため、プロセスマイニングを使って、それが「特定の得意先・製品によって起きている」といったことを可視化します。得意先によって起きているのであれば、「得意先とのコミュニケーションにおけるトラブルや仕様変更などがあり出荷準備をし直さなくてはならず、出荷が遅れたのかな?」という推察ができます。また、ある特定の製品で起きているのであれば、その製品を作っている工場からの発送が遅れたか、その一部部材の調達に問題があり、結果的に遅延していたということがわかります。こういった事象を可視化し、原因を明らかにして、それに対する具体的な解決策を提示し、それがROI的に成り立つかということを確認した上で、解決策を具現化するという流れです。ただ、私たちがこの流れの中で、プロセスマイニングを用いているのは、事象を可視化するところ、つまりOODAのOのところだけだったのです。

 

-現在では、プロセスマイニングを用いたアプローチが変わりつつあるということなのでしょうか?

当然ながら、先ほどの状態で2年間も続けていると、お客さんと会話している中で、私たちのアプローチもどんどん改善しなくてはいけないという話が出てきます。

そこで、私たちは新しいアプローチを検討しています。それは、事象の可視化だけではなく、原因パターンをモデル化し、プロセスのリモデリングをして、具体的な解決策もプロセスマイニングツールで実現する、OODAループ全般をカバーすることが求められてきていると考えています。その為、私たちは“Process Mining Tool”という言い方を辞め、“Process Optimization Tool”と呼び始めています。最適化の余地を見つけるだけでなく、実際の最適化まで踏み込んで、業務改革を進めるというのが今の当社が取り組んでいるところです。実は、皆さんが耳にしたことがある企業でも既に取り組み始めているところもあります。

もちろんプロセスマイニング自体にはとても価値があります。今まで見えなかったものを、ファクトベースで、データドリブンで可視化できるというのは、非常にパワフルであり、価値がありますよね。でも、先進的に取り組んでいる企業にとっては、最適化の余地を、その後いかに自律化の世界にまで繋げていくかということが彼らのビジネスアジェンダになっているのです。そして、そのアジェンダに対して、「こういったことができる」と私たちが提案をし、具体的にいわゆる「Proof of Value (PoV)」として、価値として成り立つのかという検証が始まってきています。

 

-Process Optimization Toolについて、詳しく教えてもらえますか?

Process Optimization Toolだからこそできることがあります。大体の日本企業は日本もグローバルもまとめてマネージメントできている会社が少ないことです。基本的には、リージョンや事業ごとにシステムが分かれており、データがサイロ化しています。でも、Process Optimization Toolでは、サイロ化された経営基盤のデータを、一つのインスタンスに入れ、各国でどんな業務をしているのかを一元的に可視化することが出来ます。例えば、アメリカのリージョンとヨーロッパのリージョンで同じ品目を扱っているとします。今のウクライナ情勢の影響で、ヨーロッパのリージョンでは出荷遅延が起きています。でも、アメリカでは多数の在庫があり、この先の予測でも余裕があるということが可視化できるだけでなく、そこから、必要な在庫をアメリカからヨーロッパに在庫転送をするという指示を自律的に行うことがProcess Optimization Toolだからこそできる話だったりします。

他にも、企業には販売拠点と製造拠点があり、それぞれで地域が分かれているケースがほとんどです。そうすると、グローバルではシステムも跨り、地域も跨り、受注・発注が複雑になりがちです。それを1つのProcess Optimization Toolで見ることにより、どこでスループットの低下が起きていて、それに対してどういった対策をとれるかが分かります。こういった議論がお客さまの中では既に進んでいて、取り組みが始まっています。

 

-日本企業が抱える課題とプロセスマイニングツールを含めたその対応策についてはいかがお考えですか?

さまざまな企業で起きていることですが、基本的に日本のグローバルの企業は、英語の壁や時差の壁などがあり、どうしても「日本は日本、海外は海外」とバラバラになっているのが実態です。その結果、実際に「さあ業務改革をしよう!」と思っても、「海外はどうなっているのかよくわからない…」という事態になります。

当社ではシステム上でオペレーションされているデータ(Oデータ)にプロセスマイニングを使用し、また、オフライン、システム外の実態(Xデータ)も、SAP社のQualtricsという従業員サーベイツールを使い、実際にシステム上でどのようなオペレーションしたのか、オペレーションをする前にどんな作業をやっているのかということを可視化することで効率よく進めています。このX&Oデータアセスメントの結果をもとに、業務のどこに改善の余地があるのかというヒートマップで視覚的に表現し、正しい議論に導けるように進めています。

こうして得たファクトベースのインプットは、声の大きい少数派に引っ張られず、海外拠点に対して適切にアプローチを行う上でとても心強いサポートになっており、ビジネスにとって最大の価値を引き出すことができるようになるのです。

 

-プロセスマイニングなどの複数のツールを用いてデジタル化を進めていくということですが、逆に複数のツールを使うことで複雑化が進行するという課題に対してはいかがお考えでしょうか?

一つのシステムに全部入っていたほうが分かりやすいし、煩雑じゃないという考え方は確かにあります。ですが、一つのシステムの中で全ての機能を実現しようと思えば、導入するまでの時間や新しいことに挑戦する時にキャッチアップしていく力、またスピード感が落ちていきます。今は最新の技術が続々と出続ける中、それを効率よく選び、ついていくことが必要なのです。

そういった時代に求められていることは、カタリスト(触媒)です。触媒として、様々な仕組みをうまく組み合わせて、お客さまのご要望を実現していくソリューションアーキテクトの役割に取り組むことが必要になります。今までできなかったことに対してさまざまなベンチャーや大企業を含めて、新しい様々な取り組みのいいとこ取りをしながら、ビジネスを変えていくことができます。このような活用をしながら、スピード感を出していくことが今、企業に求められていると考えています。

 

-モニタリングツールとしてのプロセスマイニングの活用事例をお教えいただけますか?

多分、皆さんは定期的に満足度調査のようなものを受けていると思います。ただ、現在ではさらにリアルタイムかつ本当に必要なタイミングで調査する仕掛けに変わっています。例えば、コールセンターに電話をして、本来なら3分ぐらいで終わるやり取りに10分もかかってしまったという実績が出た瞬間に、その電話を担当した人に「今のやりとりはどうでしたか?」というサーベイが飛んでいくというのが普通に行われています。定期的な満足度調査では、ほとんどの人たちは「だいたい良かった、特に問題なかった」って答えがちですよね。でも、今まさに10分を超えてしまった案件にピンポイントでサーベイをかけることで、本当の現場の声が聞くことができるのです。

プロセスマイニングの世界の中でも同じことが起きています。実際に日々の運用の中で、例えばある一定の閾値を超えた出荷遅延が起きた時、ポンとサーベイが飛んでいき、「今起きたこの出荷遅延はどこで起きたんですか?」とヒアリングすることによって、本当の原因を見つけ、解決策を取る事ができるようになるのです。OODAの世界の中で、実際に事象を理解し、原因を特定した上で、次の判断やアクションにつなげていく必要が出てきているということでしょう。

 

-プロセスマイニングが普及することで、社会や企業にはどのような変化が現れるとお考えですか?

いわゆる「DX」は、デジタルではなくトランスフォーメーションの方が重要です。デジタルはあくまで実現の仕方であって、何をトランスフォームするのかが一番考えなければいけないことだと思っています。「トランスフォームするべきビジネスアジェンダは何か?」というところをファクトベース、データドリブンで捉えて、それに対してアクションできることが重要です。

また、海外企業相手でも、ファクトベースのディスカッションをすることで、今までとは違うレベルで取り組むことができるようになると考えています。なので、日本にとってはとてもありがたいツールと考えていいのではないでしょうか。

 

-さまざまな企業の方々とお話しさせて頂いている中で、現状は「プロセスマイニングを扱う人たちの間でプロセスマイニングに関する共通認識が確立されておらず、その結果としてお客さまに過大な期待を抱かれている状況」との声を耳にすることがあります。この点はいかがお考えでしょうか?

おっしゃる通りで、多大なる期待を持って、プロセスマイニングに手を上げてくる企業がいるのは事実です。とりあえずデータを入れたら、何かシステムが教えてくれる、といった感じです。そういったとき、私たちはPoVで実際にお客さんの取り組みたいテーマに対して、Operational Excellenceという当社固有のメソドロジーを使用し、当該業務を網羅的に可視化した上で、どこに最適化の余地があるのか、それが本当に実施できるのかというところを確認します。その上で、企業として価値を感じていただいた上で本格導入の判断をするというやり方が、本来あるべきやり方だと思っています。

一方で、アカデミックな観点から「プロセスマイニングとは?」「そこからもたらせられる価値とは?」といったところを定義することも必要だと思います。アカデミックでも発展していくことで、僕らの現場もさらに発展していきます。

 

-プロセスマイニングを扱い始めて2年ほど経過したとのことでしたが、大村様が実際に携わられている中で、お客様の方から「プロセスマイニングってどんなものなの?」といったお話をいただくことは増えてきましたか?

基本的にはまだこちらからご紹介することが多いですね。例えば、「Celonisという名前を聞いたことありますか?」という質問に対して、「聞いたことがあります」と答える人は確かに増えてきてはいますが、実際にどんなことが出来るかというところに対しては、まだまだ情報が足りない状態じゃないかなと思います。

 

-Celonisは日本での導入実績が着実に積み上げられているという話を聞いておりますが、どうしても大企業が中心のような印象を受けます。これは、SAPなどを導入しているような大企業ならばデータが蓄積されており、プロセスマイニングの導入である程度クイックに結果が出るような側面があるからかと考えられます。 一方で、日本企業の99%超は中小企業であり、今後は中小企業への浸透も大きな課題になってくるかと思われますが、いかがお考えでしょうか?

今おっしゃられたことは正しいです。当社の顧客企業の多くは中堅以上のサイズがありますが、それはある程度の領域をテンプレートベースでアプローチすることが出来るからです。テンプレートベースというのは、例えばSAPを使っているなら、データ抽出から可視化まで、ある程度コンプリートされたテンプレートを使い、1か月で最初の現状把握を行うことができます。

対して、いわゆるスクラッチの企業固有で作られたものに関しては、データ抽出から、それをプロセス上でどう表現するかということを含めて定義しなければなりません。そうすると正直、大体二倍から三倍の期間がかかります。

ただ、今抱えている課題はどのサイズの企業でも同じことが多く、今、私たちはプロセスマイニングツールで可視化を段階的に適用するアプローチを進めています。一番初めに、やはりスピード感がなければいけないという状況なら、サーベイツールを用いてクイックでアセスメントを行い、そこである程度大きなペインが見えたら、事象の確認だけでなく、要因の特定も併せてプロセスマイニングを必要な箇所に最適化して可視化を進めていきます。

そうすることで、一足飛びに「他の企業でも同じような事例がありまして、たぶん御社も同じような課題がありますよ」と、ある程度言い当てられるだけのナレッジが出来上がってきています。こういったナレッジも活用し、当初から大規模に始めるだけの体力がない企業に対しては、もう少しクイック&スモールスタートで改善価値を提供するアプローチも既に始めています。

日本企業でも、海外オフィスはやっぱり投資判断の権限がすごく小さいです。日本だと億単位の予算が普通につく案件でも、海外だと本当に数百万でも日本に決裁を求めなくてはいけない状態ということもよくあります。そんな中、私たちがコンサルテーションしている現地の人たちは、何かしら業務の課題を抱えていて、その改善をしていきたいと強く思っています。そういった実情に合わせて、当社はセカンドギアとして、クイックにアセスするという仕組みも大切かなと思っています。

 

-大村様がプロセスマイニングとの親和性があるとお考えになる業界はありますか?

まず、やはり大きなパイとしては製造業ですね。製造業は元々、効率化に対する意識が高いです。さらに、基本的な業務の流れは共通する部分があるので、製造業を中心に取り組んでいくということが当社の主たるビジネスになっています。

一方で、金融業は今、ものすごく大きく取り組みが変わってきています。例えばリースは、今まではモノを貸して、何年間か使ってもらい、リース料というマージンを得るというビジネスでした。でも、このビジネスはもう古いですよね。現在では、リースで使ってもらっている間、お客さんの使用状況に合わせて、プラスアルファのサービスやコンサルテーションを提供していくという取り組みが始まっています。このような取り組みの中で、業務を通しで見た時に、どこにボトルネックがあるのかを可視化することを金融業は強く求めており、Process Optimization Toolを使いながらコンサルテーションする機会が増えています。なので、私たちは、製造業はもちろんベースとしてありながらも、金融業はこれからぐんと伸びていくと思っています。

 

-大村様がプロセスマイニングに携わられてきた中で、プロセスマイニングの大きなパワーを感じるような事例はこれまでにありましたでしょうか?

よく私たちが事例で話すのは、債権管理についてです。この業務は、相当のケースを人がやっています。そこに対してプロセスマイニングを適用することにより、過去の傾向から、遅滞が発生する傾向を特定し、またその要因が得意先にあるのか、営業担当者にあるのかを類推することができます。また消込業務もルールとAIを組み合わせることで手作業、手戻りを多く減らすことができます。ある企業では年間で2億円の削減効果が得られるという試算を出すことが出来ました。システムの導入自体は数千万ですから、これは大変大きなリターンを得ることができるという事例ですね。

この事例のポイントは、グローバルで見たときに、各国でどういうオペレーションをしていて、その中で非効率な部分がどこなのかを、日本本社では把握していなかったということです。債権管理の周辺環境がすでに高度化していると思われていた欧州で、大きく最適化の余地があると特定できたことに、プロセスマイニングのパワーを感じました。

 

最後に、少し規模が大きい話にはなってしまいますが、少子化が進み、生産人口が減少している日本において、プロセスマイニングの活用を通し、大村様が目指す展望をお教えください。

本当に様々な領域で人材が枯渇している状態が既に起きています。いかに今の限られたリソースを最適なところに配置していくかということが課題です。そこで、ボトルネックとなっている箇所、ショーストッパーになっている箇所を特定した上で、そこに注力することにより余力を作って、その余力を必要なところに振り撒くということが求められているのではないでしょうか。その実現を考えながら、私はプロセスマイニングに取り組んでいます。

 

-貴重なお話をお聞かせいただきまして、ありがとうございました。

 

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