インタビュー

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【Airitech】西村氏の著書執筆への想いとプロセスマイニングの展望

 

この度は、2022年4月22日にプロセスマイニングの入門書となる「プロセスマイニング入門 〜Celonis Free Planで始める業務分析〜」を出版されたAiritech株式会社の西村 桂之氏に、本書の執筆背景やAiritech社でのプロセスマイニングに関する取り組みの現状・展望についてお話しいただきました。

 

-初めに、今回出版された本のターゲット層はどのように想定されていますか?

ターゲット層としては、2つあります。

一つ目のターゲット層は、実用者層となります。Celonisを用いてプロセスマイニングを始めたい人となります。特にユーザー企業の情報システム部門や、Celonisを取り扱おうとしているIT企業が中心です。背景として、何度かセミナーをやる中で、「データ分析を行うためのデータ収集」が大変であると耳にすることが多くあります。従って、そこの障壁を取り払い、「まずは利用してもらう」ということを意識しています。

二つ目のターゲット層は、ビジネスの改善・改革、DX推進をプロセスマイニングで検討されている事業企画部門や部署をターゲットとしています。

 

-初心者向けに執筆されたとのことですが、特に苦労された点についてお教えください。

一番苦労したのは単語の使い方ですね。専門用語をどのように表現するかというところに苦労しました。製品で使われる用語を使いつつ、その説明を用語集として本の最後につけるようにしました。また、説明に関するところは一般的に使用されている表現を使うように意識しました。加えて、書籍のレビューに関しては、弊社のプロセスマイニングを行っているメンバーだけでなく、プロセスマイニングを全く知らないメンバー、開発経験豊富なメンバーから経験の浅いメンバーまで広く見てもらい、さまざまなコメントを集めて、分かりやすく修正していきました。文章だけではわかりにくい部分もございますので、実際に操作しているところをスクリーンショットし、画像で操作感を示すようにしました。ページ数も作業工数も増えましたが、良くなったと考えています。

 

-プロセスマイニングを業務に導入するメリットは何でしょうか?

1番のメリットは、各企業が行う業務プロセスの可視化ができるということです。定量的かつ客観的な情報として可視化されるため、非常に使い勝手が良いと考えています。特に、根拠を提示する上で、プロセスマイニングは裏付けとなるため、非常に有用です。

加えて、網羅性も大きなポイントです。担当者にヒアリングする場合は、どうしても主観的なものが入るため、抜けてしまう部分もありますが、プロセスマイニングの場合はありません。むしろ、知らなかったものが可視化されるので、イレギュラーな業務や「本来は行われないはずの業務」が見えることもあります。プロセスマイニング、特にCelonisでは、実際に業務を分析し、課題を発見し、課題に対する対処もできます。そして、その結果を計測するというPDCAのサイクル全体に活かすことができるのもメリットの1つです。

従来は、主観的で断片的なものになっていたところに、プロセスマイニングを活用することで、工数を圧縮でき、業務の分析という本来の目的に時間を割けるようになるのも大きなメリットです。

 

-プロセスマイニングを業務に導入する上で想定される障壁は何でしょうか?

障壁は大きく分けて3つあります。

まず、プロセスマイニングというものは、導入してすぐに効果が出るものではありません。実際の業務を見て、分析して、対処して、初めて効果が出てくるのです。製品単体ではなかなか効果が出にくいため、費用対効果を見て導入を判断する企業には訴求が難しいと考えています。

次に、日本の国内のシステムはフルスクラッチで、パッケージ製品を入れても独自の改修や機能追加を入れて運用されていることが多いため、製品導入時の工数が膨らみプロセスマイニングのファーストステップまでに時間を要するというものです。

最後に、経営層がプロセスの重要性を理解していないケースも多く、プロセス改善による改善やその効果についてまだご認識されている方が少なく理解を得づらいというものです。

 

-Airitech社では、これらの障壁にどのような対策を講じていらっしゃいますか?

1つ目の「すぐに効果が見えない」という問題への対策として、Celonisは導入前にPoV(Proof of Value)という価値検証の取り組みを行っています。PoVでは、利用方法だけでなく、発見された課題に何かしらの対処をした場合にどれくらいの効果が出るかということや、定量的な評価の仕方もワークショップの中でやっています。

例えば、商品の価格改定を、マニュアルを用いて1年間2,000件やっているとします。1件あたり15分かかる作業であれば、それを時給換算して、金額に置き換えていきます。そして、「これを自動化したら、これだけの時間が削減されるので、これくらいの人件費を削減できます。そして、圧縮した人件費は、会社の成長に回せますよ」とお伝えすることで、費用対効果を訴求するようにしています。最終的に企業にとっては「金額」が重要ですので、どれだけコストを削減できるか、利益を生めるかというところを訴求していきます。

2つ目の「独自システムやカスタマイズによる複雑化で適応しにくい」という問題への対処ですが、これは弊社がプロセスマイニング以外に行なっているサービスの知見を活かすことで解消を試みています。弊社はシステムやデータの解析を得意としています。そういった知見を活用して、短時間で、必要な情報を分析して、その定義を作り、Celonisに早く取り込めるというサービスを行っています。

最後の「プロセスの重要性を伝えること」に関しては、プロセスマイニング協会をはじめ、業務改善を謳う加盟組織と協働して、情報発信を行なっていくことが必要だと考えています。ただし、プロセスマイニングが大事だというのは少しずつ広まってきていますね。

 

-プロセスマイニングの重要性とはどういったものなのでしょうか?

現時点で世間における重要性はまだまだではありますが、弊社はこのプロセスマイニングを非常に重要なソリューションだと捉えています。具体的には、DXの最後の砦と考えております。

企業全体のDXを推進する上では、プロセスマイニングを活用しないと成功しないと認識しています。ビジネス活動データを用いて企業の活動を網羅的に可視化・分析・改善を実行して、より利益が出る形に効率化・スリム化していくということが、労働人口の減少に伴う生産性の改善という課題へのクリティカルなソリューションになるのではないかと考えております。将来、プロセスマイニングといったソリューションがないと、労働人口減少対策としての業務の最適化や標準化はできないと考えています。

世の中は複雑化し、様々な情報が流れ、その情報自体も色々なところに存在しています。それらを効率的に集約しデータ基盤となるソリューションはやはりプロセスマイニングではないでしょうか。5年から10年も経てば、プロセスマイニングも一般化し様々な企業で導入されて、企業の生産性・効率性を改善していくという世の中が来ると考えています。日本の生産性は非常に低いと言われていますが、その改善に向けて、プロセスマイニングは大きな武器になっていくと想像しています。

 

-プロセスマイニングをお客様に紹介される際、実際にどういった文脈でご紹介されていますか?

そもそもプロセスマイニングを知らない方も多いので、業務改善やシステムリプレースをしたいという意向のあるお客様に、「プロセスマイニングというものがあり、Celonisという良い製品があります」という話を何かしらの提案のタイミングで行っています。そして、プロセスを可視化して、分析できるソリューションがあることを知っていただいた上で、提案をしていきます。今はPoCという形で、実際に会社に適応したら、どういうものが見えるかを確認していただき、導入のきっかけを作っていくことを中心に行っています。

さらに、以前はこちらからご紹介するケースが多かったのですが、今はお客様の方でプロセスマイニングに興味を持たれ、お声掛けをいただけるケースも増えてきました。

 

-各ベンダーから多くのプロセスマイニングツールが発表されていますが、Airitech社がCelonisを扱い始めたきっかけは何でしょうか?

実は、3年半くらい前から、弊社代表の山﨑が「プロセスマイニングというソリューションがある。企業のパフォーマンス改善するためにはプロセスマイニングをやらなければだめだ」と注目しておりました。その中で海外のプロセスマイニングソリューションを調査したところ、Celonisがトップシェアで、市場シェアの大半を占めていました。そのため、トップシェアのものをしっかり使っていこうと考え、Celonisのパートナーになりました。

他の製品も触ってみましたが、使いやすさ、UIの部分、レポートを可視化したときの視認性で、Celonisは抜きん出ています。加えて、機械学習や自動化、外部システム連携などの機能も充実していて、そういったところでもCelonisを選択して良かったと考えています。

 

-実際にプロセスマイニングツールを知り、使い始めた際にはどのように感じられましたか?

代表の山﨑は、システムのトラブルシュートサービスを長年やってきております。弊社のトラブルシュートサービスはシステム上の処理プロセスやインフラ上の問題点を洗い出すサービスになっています。システム上の「どこに問題があるのか」を様々なログを収取・解析し、その結果を基に問題点と改善提案を行ってシステムパフォーマンス改善を行うというものになります。そのサービス提供している中で、プロセスマイニングに出会い、弊社のパフォーマンス改善に対する考え方に非常に合っていると感じたとのこと。

私自身、ログを可視化して解析・可視化するというもののは、欲していたものでした。前職で品質管理部門にいた際に、実際の業務に即したテストシナリオを用いないと複合的かつ潜在的な不具合は発見できないと考えておりました。そこで、システム利用ログをもとにプロセスを可視化しテストシナリオ・テストケースとして生成できれば、複合的や潜在的な不具合を効率的に摘出できるのではないか考えていました。そして、弊社でプロセスマイニングを知ったときに、欲していたソリューションと理想とするテストシナリオ作成ができると感じました。そこから「プロセスマイニングは業務分析以外の活用方法としてテスト工程でも使える」ということで、ベンダー様と連携して、テスト活用するためのCelonisテンプレートを開発しています。

 

-Celonisのパートナーの中で、Airitech社の強みは何でしょうか?

3つあります。まず、障壁として述べた「各企業の独自システム」に対して、弊社の各サービス知見と経験を活用し柔軟かつ企業様に対して最適な対応ができるというものになります。次に、技術に明るいエンジニアやプロセスマイニングが好きなエンジニアが揃っているため、お客様に対して価値を提供しやすいというものです。最後に、先行した取り組みで情報が蓄積されています。実際に、大手SIerやコンサルティングファームもパートナーとして参入されていますが、弊社の長い取り組みによる知見や幅広いノウハウに関しては、他社にアドバイスできるような状態になっていると自負しています。

 

―お客様の間で、プロセスマイニングに対する過剰な期待が抱かれていることも多いと伺います。このような意見については、いかがお考えですか?

導入するだけで、公開されているような改善実績が得られると期待されているお客様もいらっしゃいます。

プロセスマイニングは、出てきたデータと結果から改善を実施し改善効果を得て価値を獲得していただくというソリューションです。弊社は、プロセスマイニングベンダーとして導入のみならず。利用して得られる価値を知っていただくための価値創出活動を行っております。

現在、Celonisを用いた業務改善のコンサルティングを行うチームを立ち上げているところです。それに紐づくサービスも立ち上げようとしていまして、利用企業様の価値創出活動の支援を強化していきたいと考えております。

 

-新規サービス立ち上げにあたり、プロセスマイニングを使って、特に注力したい業界・業種はございますか?

ビジネス系では、やはり大手の製造業です。特にSAPやERPパッケージを入れているお客様はマッチしやすいと考えています。テンプレートや実績も蓄積されてきているため、Celonis適用活動はスムーズになってきていると思います。

プロセスコンサルティング(価値創造活動)に関して申し上げますと、業界や業種を問わず、広くやっていきたいと考えております。具体的に、「御社はどの業務にプロセス上の課題がありますか?その課題に対してはこのような原因はありませんか?それを定性的・定量的に可視化しませんか?」とお客様の課題に切り込んで行けるようになることを目標としています。

 

-導入に当たり、古くから続く企業体質がプロセスマイニングの普及を阻んでいると感じられることはありますか?

はい。あります。プロセスの重要性や可能性についての理解不足や旧来の商習慣に囚われて、プロセスマイニングの価値を上手く引き出しきれずにいると考えています。一方で、プロセスマイニングに取り組む中で、歴史に関係なく、ゴール感をしっかりと定義し、何を自分たちが目指し、それによって何を得たいのかということを明確にしている企業もございます。そのような企業はプロセスマイニング活用の道筋を自らで描かれております。今後、このような企業が増えていっていくことを望んでおります。また、その支援を弊社が出来ればとも考えております。

 

最後に、プロセスマイニングに関連した日本の生産性について思い描かれている将来像をお聞かせください。

プロセスマイニングが広く活用されて生産性を改善していく企業が増えていくと考えています。生産性改善結果として、業務は最適化されていき労働生産性について欧州や米国と変わらなくなっていくと考えています。また、組織には、プロセスを司る部署が設立され、プロセス上の課題(非効率・逸脱したプロセス等)に対して組織横断的に改善してく仕組みも出来ていくと考えています。最終的には、働く人やそこに関わる人達の生活も改善されていくでしょう。ワークライフバランスにも生産性改善が寄与して定時で帰り、休日はしっかりと休むという社会になればと想像しております。

 

-貴重なお話をお聞かせいただきまして、ありがとうございました。

 

2022年4月22日にAiritech社から発売されたプロセスマイニングの入門書「プロセスマイニング入門 〜Celonis Free Planで始める業務分析〜」は現在、Amazon Kindleよりダウンロード可能! 本書は、プロセスマイニングを初めて学ぶ方に最適な入門書として、無償のプロセスマイニングソフトウェアであるCelonis Free Planを使って、プロセスマイニングの仕組みが解説されています。また、AiritechのCelonis認定資格を持つエンジニアが執筆しているため、Celonis認定資格にチャレンジする方にもおすすめの一冊となっています。詳細はこちらよりご確認いただけます。

 

今回インタビューさせていただいたAiritech株式会社のホームページはこちらから